情シスも予算もない総務が、自力でやった自動化の事例と失敗した話

「自動化したいけど、RPAって高いし難しそう」

こんな悩みを抱えていませんか?

調べると、出てくるのは「UiPath導入で工数80%削減」「BizRobo!でRPAを活用」といった大企業の話ばかり。

情報システム部がいて、IT予算があって、専任担当者がいる前提の話ですよね。

うちは総務2名・情シスなし・ツール導入の予算申請も一苦労です。
そんな環境で「自動化なんて無理だ」と思っていました。

でも実際にやってみたら、Googleの無料ツールだけで業務の自動化はかなりのところまでできました。逆に「これは無理だった」という失敗も正直にお伝えします。

「RPAは大企業向けで自分には関係ない」
と思っている総務担当者に向けて書きます。

結論|業務を選べば成果を出せる

情シスなし・予算ゼロでも、総務業務の自動化は今日から始められる。ただし、向かない業務に手を出すと失敗する。

  • 今日できる自動化: Googleフォーム申請→承認通知→スプレッドシート記録(設定3時間・¥0)
  • やってはいけない自動化: 有料システム間のAPI連携・OCR精度が必要な経費精算
  • 続かせるコツ: 「自分しかわからない自動化」を作らないこと

「RPAは大企業向け」は本当か——ノーコードで代替できた理由

GAS・Make・Zapierの3択で、RPAの代わりはできる

RPA(UiPath・BizRobo!等)は導入費用が月数万円〜数十万円、設定にIT知識が必要、ベンダーサポートが前提です。中小企業・少人数総務には現実的ではありません。

ただ、総務の自動化ニーズの7〜8割は、ノーコードツールで代替できます。

ツール月額コスト習得時間の目安得意なこと
Google Apps Script(GAS)¥05〜10時間Googleサービス間の自動連携
Make(旧Integromat)¥0〜1,200円3〜5時間複数サービス間のデータ連携
Zapier¥0〜2,700円1〜3時間トリガー→アクションのシンプルな自動化
Notionオートメーション¥01〜2時間Notion内の自動ステータス変更・通知

私が一番使っているのはGASです。Googleフォーム・スプレッドシート・Gmailをつなぐだけで、総務業務のかなりの部分が自動化できます。「プログラミング経験ゼロ」でも、ChatGPTにやりたいことを伝えてコードを生成してもらえば書けます。

「ツールを覚えなくても自動化できる」具体的な方法

いきなりGASを学ぼうとしなくて大丈夫です。

  1. やりたいことを日本語で書く:「Googleフォームで申請が来たら、承認者にGmailで通知を送りたい」
  2. ChatGPTに投げる:「Google Apps Scriptで以下を実現するコードを書いてください」
  3. コピペしてGASエディタに貼り付ける:動作確認して、エラーが出たらそのエラー文もChatGPTに投げる

これだけです。プログラミングの知識は一切不要。私も最初はこのやり方でGASを使い始めました。

実際にやった自動化事例3選

事例①:申請→承認通知→記録の自動化(GAS・¥0・設定3時間)

自動化した業務: 有給申請・備品購入申請・各種届出

自動化前の状態:
– 申請書を紙で提出→総務が受け取る→上長に回覧→記録をExcelに手入力
– 申請者からの「承認されましたか?」という問い合わせが毎週5〜10件発生

自動化後の流れ:
1. 申請者がGoogleフォームに入力して送信
2. GASが起動→承認者にGmailで通知メール自動送信(申請内容を本文に自動挿入)
3. 承認者が承認→フォームの回答スプレッドシートに承認日時が自動記録

効果:
– 承認問い合わせ:月10件 → 1〜2件
– 記録作業:月2時間 → ゼロ(スプレッドシートに自動記録)
– 印刷コスト:月30〜40枚 → ゼロ

設定のポイント:
GASのトリガーを「フォーム送信時」に設定するだけで起動します。コードはChatGPTで生成。設定時間は初回3時間、2回目以降は1時間以内でした。

事例②:定期リマインドの自動送信(GAS・¥0・設定1時間)

自動化した業務: 毎月の経費精算締め日・法定点検・社会保険手続き期限のリマインド

自動化前の状態:
– 総務担当が毎回Gmailを手動で作成して送信
– 1件あたり5〜10分、月10件以上発生

自動化後の流れ:
1. スプレッドシートにリマインド一覧(送信日・宛先・件名・本文テンプレ)を登録
2. GASが毎朝8時に自動起動→当日送信日のリマインドを自動メール送信

効果:
– リマインドメール作成工数:月1.5〜2時間 → ほぼゼロ
– 「言ったか言っていないか」問題:完全解消(送信記録がスプレッドシートに残る)

事例③:会議室予約の二重チェック自動化(Googleカレンダー・¥0・設定30分)

自動化した業務: 会議室のダブルブッキング確認

自動化前の状態:
– ホワイトボードの予約表を目視確認→電話・口頭での予約受付
– 週に1〜2回はダブルブッキングが発生

自動化後の流れ:
GASでGoogleカレンダーのリソース(会議室)を設定するだけ。予約が重複すると自動で拒否通知が出る。

効果:
– ダブルブッキング:週1〜2件 → ゼロ
– 「会議室空いてますか」問い合わせ:週5件 → ゼロ(自分でカレンダーを見るようになった)
– 設定時間:30分・コストゼロ

やってみて断念した自動化——向かない業務と失敗パターン

断念①:勤怠システム↔給与システムのデータ連携

やろうとしたこと: 勤怠管理システムの月次集計データを、給与計算システムに自動転記する

断念した理由:
両方のシステムが外部APIに対応していなかった。Excelエクスポート→インポートの手順を自動化しようとしたが、システムのUIが変わるたびにスクレイピングのコードが壊れる。

結果:「修正し続けるコスト」が「手動でやるコスト」を超えたため断念。

教訓: API連携に対応していないシステム同士のデータ連携はノーコードでは限界がある。有料RPAツールかCSV手動エクスポートの方が現実的。

断念②:領収書のOCR自動読み取り

やろうとしたこと: 提出された領収書をスキャン→OCRで自動読み取り→経費精算シートに自動入力

断念した理由:
無料〜低価格のOCRツールの精度が思ったより低かった。手書き領収書・レシートは読み取りエラーが多発し、確認・修正の工数が「手入力より多い」という本末転倒な状態に。

教訓: OCRは有料サービス(Adobe Acrobat・クラウドサインスキャン等)でないと実用精度が出ない。試算すると手入力より高コストだったため断念。

失敗パターンのまとめ

自動化に向かない業務の特徴はこれです。

  • 例外処理が多い業務:「だいたいこのパターンだけど、◯◯のときは違う」が多い業務は自動化できない
  • 手書き・紙が混在する業務:デジタルデータになっていない情報が入ると自動化が止まる
  • 有料システム間の連携が必要な業務:APIに対応していないと自動化はほぼ不可能
  • 判断・裁量が必要な業務:「この場合は例外対応」という判断が発生する業務

自動化を「続かせる」仕組みのつくり方

「自分しかわからない自動化」を作らない

自動化で一番よくある失敗は、担当者が異動・退職したときに止まることです。

私が気をつけているのは3点です。

  1. 自動化の「設計書」を必ず残す:何のフォームを使っているか・どのGASが動いているか・変更方法をNotionにドキュメント化
  2. GASのコードにコメントを書く:ChatGPTに「コメントをつけてください」と頼むだけで生成してくれる
  3. 止まったときの「手動代替手順」も書いておく:自動化が壊れても業務が止まらないように

改善サイクルを仕組みにする

自動化は「作って終わり」ではなく、定期的なメンテナンスが必要です。

  • 月1回: 自動化フローが正常に動いているか確認
  • 3ヶ月ごと: 連携しているサービスのUI変更・仕様変更がないか確認
  • 人事異動のたびに: 承認者のメールアドレス・権限設定を更新

この3点を習慣にするだけで、「半年後に気づいたら止まってた」という事態を防げます。

よくある質問

Q. プログラミングが全くできなくても自動化はできますか?

できます。GASのコードはChatGPTに「やりたいことを日本語で説明してコードを書いてもらう」だけで動くものが大半です。実際に私もプログラミング知識ゼロの状態から始めました。

Q. セキュリティ面は大丈夫ですか?

GASはGoogleのサーバー上で動くため、Googleアカウントのセキュリティ設定に準じます。社内の機密情報を外部サービス(Make・Zapier等)に通す場合は、セキュリティポリシーを確認してから使ってください。

Q. どのくらいの時間があれば自動化できますか?

事例①のような申請フロー自動化なら、初回は3〜4時間あれば設定できます。2回目以降は同じパターンなので1〜2時間です。

Q. 自動化がうまくいかなかったら元に戻せますか?

はい。既存の紙・手動フローを廃止せず並行運用しながら試せるので、自動化が失敗しても即元に戻せます。いきなり「紙をやめる」は禁物です。


自動化の推進経験はキャリアにも直結する

「自動化できる総務」の市場価値は高い

「GASで業務を自動化した経験がある」「ノーコードツールで業務フローを構築した経験がある」——これ、転職市場でかなり評価されます。

特に「専任IT担当なし・予算なし・自力でやりきった」という経験は、即戦力の証明として強い。中小企業のDX担当・業務改善専任職・情シス兼務ポジションへの転職で武器になります。

「自動化推進担当→DX推進→情シス」へのキャリアパス

総務での自動化経験は、そのままDX推進担当・情報システム部門・業務改善専任職へのキャリアチェンジに直結します。

「プログラミングができないと無理」ではなく、「業務を理解した上で自動化の設計ができる」という能力の方が、現場では圧倒的に求められます。


まとめ

  • 情シスなし・予算ゼロでもGAS・Makeで自動化はできる
  • 向く業務: 定型・繰り返し・デジタルデータが入力の起点になっている業務
  • 向かない業務: 例外処理が多い・手書き混在・有料システム間連携が必要な業務
  • 成功のカギ: 断念基準を最初に決めておくこと・ドキュメント化・並行運用
  • 副産物: 自動化推進の実績はキャリアアップの武器になる

「RPAは大企業向け」という先入観を捨てて、まずGASで1つだけ試してみてください。最初の1本が動いたときの感覚は、なかなかクセになります。

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この記事は、総務部での実務経験をもとに執筆しています。情シスなし・少人数体制でのDX・自動化推進の実体験をベースにしています。