勤怠管理システムの導入手順を5フェーズで解説|中小企業の総務担当が失敗しないスケジュールの組み方

「毎月の勤怠集計、またExcelでやるんですか…」と思ったこと、ありませんか。

打刻漏れのチェック、残業時間の集計、有給残数の確認。月末になるたびに同じ作業を繰り返して、「これって自動化できないのかな」とぼんやり考えているのではないでしょうか。

私のまわりにも同じ状況の総務担当者はたくさんいます。紙のタイムカードをExcelに手入力して、月に丸2日が集計作業に消える…という話も珍しくないんですね。

この記事では、勤怠管理システムの導入を決めた(または検討している)中小企業の総務担当者に向けて、準備から定着までの導入手順を5つのフェーズに分けて解説します。「何から手をつければいいか」「導入までどれくらいの期間がかかるのか」という疑問に、現場目線で答えていきます。


導入手順の全体像:5フェーズ・標準スケジュール

まず結論から言うと、勤怠管理システムの導入は「準備→比較→移行→定着」の流れで進めるのが基本です。中小企業(従業員30〜300名規模)であれば、着手から定着までおおむね2〜3ヶ月を見ておくと無理がありません。

フェーズ 内容 期間の目安
フェーズ0 現状の棚卸しと選定基準の整理 1〜2週間
フェーズ1 候補の絞り込みと無料トライアル比較 2〜3週間
フェーズ2 移行と初期設定 1ヶ月
フェーズ3 本稼働・従業員への周知 本稼働2週間前〜
フェーズ4 定着フェーズ(運用の安定化) 稼働後1〜3ヶ月

「思ったより長い」と感じるかもしれませんが、ここを焦って詰め込むと、後述する「よくある失敗」にそのままハマります。各フェーズで何をやるべきか、順番に見ていきましょう。


フェーズ0:現状の棚卸しと選定基準の整理(1〜2週間)

導入の第一歩は、システム選びではなく「自社の現状を整理すること」です。まず自社の勤務形態を洗い出します。フレックス制・シフト制・固定時間制など、どんな働き方があるかをリストアップするのです。

  • 雇用形態の種類(正社員・パート・派遣など)
  • 就業規則の確認(残業の上限、特別休暇の種類など)
  • 現在の勤怠データの保管場所・フォーマット

これを怠ると、システム導入後に「うちの特殊な休暇制度に対応していなかった」という事態が起きます。実際に私の知っている会社では、振替休日の仕組みがシステムに設定できず、結局半年後に別のシステムに乗り換えた例がありました。棚卸しの2週間を惜しむと、半年単位の手戻りにつながるということです。

現状把握と同時に、どんな基準でシステムを選ぶかも決めておきます。数十種類あるシステムの中から何を選べばいいか…。大手メディアの比較記事は機能一覧が並ぶだけのものが多いですが、中小企業の総務担当に本当に必要な視点は次の5つに絞られます。

  1. 現場が使いこなせるか(操作のシンプルさ)
  2. 給与計算ソフトと連携できるか
  3. 法改正への対応スピード
  4. サポート体制は手厚いか
  5. コストが企業規模に見合っているか

それぞれ簡単に補足します。

①現場が使いこなせるか:「スマホが苦手な60代のベテラン社員」がいる現場では、操作がシンプルなツールを選ぶ必要があります。「ジョブカン勤怠管理」や「キングオブタイム」は操作がシンプルで評判が良いです。

②給与計算ソフトと連携できるか:勤怠データを手で転記すると二重入力の手間と転記ミスのリスクが生まれます。既に使っている給与計算ソフト(弥生給与・freee給与・マネーフォワードなど)との連携可否は必ず確認してください。同一サービス内で勤怠〜給与〜会計がまとまっているシリーズを使うと、連携の手間がほぼゼロになります。

③法改正への対応スピード:労働基準法は定期的に改正されます。クラウド型サービスならベンダー側がアップデートで対応してくれるのが一般的ですが、対応の速さには差があります。

④サポート体制は手厚いか:月末の締め処理中にトラブルが起きたとき、チャットのみ・メールのみのサポートでは困ります…。電話サポートの有無、初期設定の支援があるかを確認しましょう。「KING OF TIME」や「SmartHR」は電話・チャット両対応で評価が高いシステムです。

⑤コストが企業規模に見合っているか:クラウド型は「1人あたり月額○○円」の従量課金が多く、従業員30人であれば月1,000〜4,500円程度、50人で月1,500〜7,500円程度が相場感です。まず「今の手作業にかかっている月次コスト」を算出して比較するのが、一番説得力ある判断材料になります。

なお、Excelでの手作業管理そのものに限界を感じている場合は、勤怠に限らず社内の他業務も含めて見直す価値があります。Excel管理の限界をWebアプリで解決する3つの方法も参考にしてみてください。


フェーズ1:候補の絞り込みと無料トライアル比較(2〜3週間)

選定基準が固まったら、候補を2〜3社に絞り込み、必ず無料トライアルを使います。実際に現場のスタッフ数名に打刻操作をさせてみてください。「使いやすい」「わかりにくい」という感想は机上では判断できないのです。

トライアル期間中に確認すること:

  • 自社の就業ルールを設定できるか
  • 給与ソフトへのデータ連携ができるか
  • 管理画面が総務担当として使いやすいか
  • サポートの対応速度・丁寧さ

勤怠だけでなく経費精算・電子契約なども含めて総務ツール全体を見直すタイミングであれば、総務ツール導入ガイド|目的別おすすめ12選と失敗しない選び方で会社規模別の選び方を先に確認しておくと、比較の軸がぶれません。

フェーズ2:移行と初期設定(1ヶ月)

システムを決定したら、初期設定を進めます。具体的には、勤務区分・休日設定・残業ルール・承認フローを設定します。

  • 旧データ(Excel・紙のタイムカード等)から移行する期間分を決める(直近1〜2ヶ月分あれば十分なケースが多い)
  • 従業員IDや部署コードなど、給与ソフト側と揃えるべき項目を突き合わせる
  • 設定担当を1人に決め、変更履歴を残しておく(複数人で触ると設定ミスの原因になりやすい)

本番稼働は「月初め」に合わせるのがおすすめです。月途中での切り替えは、旧システムと新システムの二重管理が発生して混乱しやすいのです。

なお、勤怠データには従業員の個人情報が含まれます。IT担当を兼任している総務であれば、移行作業中のアカウント権限設定や退職者アカウントの削除漏れにも注意しておきたいところです。社内ITを兼任しているあなたへ|セキュリティリスク5つと今日から始める優先対策も合わせて確認しておくと安心です。

フェーズ3:本稼働・従業員への周知(本稼働2週間前〜)

従業員への周知は、本稼働の2週間前から始めるのが目安です。説明会ができない場合は、操作マニュアル1枚(A4裏表)を配布するだけでも定着率が変わります。

  • 周知は「メール一斉送信+部署単位の口頭フォロー」の二段構えにする(メールだけでは読まれないことが多い)
  • 初日の打刻方法だけは全員に個別確認する(ここで詰まると以降の定着が遅れる)

フェーズ4:定着フェーズ(稼働後1〜3ヶ月)

稼働後最初の1〜3ヶ月が「定着」のカギです。打刻漏れ・操作ミスが頻発する時期なので、担当者が個別フォローできる体制を作っておきます。

  • 打刻漏れが多い従業員にはメールやSlackで個別連絡
  • 月次締め処理の手順書を自社用に作成する
  • 最初の3ヶ月は旧データ(Excel等)も並行保管しておく

3ヶ月で定着すれば、4ヶ月目以降はほぼ自走します。ここを乗り越えれば、毎月の集計作業から解放されるのです。


なぜ今、導入を急ぐべきなのか

「うちは今のやり方でも回っている」という声も聞きます。ただ、正直に言うと、それは「回っているように見えているだけ」のケースが多いのです。

法改正で「管理の証拠」が必要になった

2019年の働き方改革関連法施行以降、時間外労働の上限規制と労働時間の正確な把握が義務化され、その運用は今も続いています。5人以上の事業所であれば、客観的な方法(タイムカードやシステムログなど)での記録が求められるのです。

Excelの手入力では「いつ、誰が入力したか」の証跡が残りにくい。労働基準監督署の調査が入ったとき、手書き・手入力のデータでは対応が難しくなります。

集計ミスが引き起こすリスク

私の知人の総務担当者は、残業時間の集計式にミスがあり、3ヶ月分の残業代を過少払いしてしまったことがあります。発覚後に全額遡及支払いとなり、経営者への説明に1週間かかったと言っていました。Excelで管理している限り、こういったヒューマンエラーはゼロにできないのです。

担当者の工数が「見えないコスト」になっている

月次の勤怠集計に2日かかっている担当者がいるとします。その人件費を時給換算すれば、年間で数十万円のコストになります。クラウド型の勤怠管理システムの月額費用は、従業員50人規模でも月1〜3万円程度。投資対効果は明らかなのです。


よくある失敗3パターンと対策

勤怠管理システムの導入は「入れれば終わり」ではありません。失敗するパターンは決まっているので、先に知っておくのが一番得策です。

失敗①:現場のヒアリングなしに導入した

「総務が決めたシステム」として押しつけると、現場から反発が起きます。特に「スマホを使いたくない」「今のやり方で問題ない」という声は無視できません。

導入前に現場のリーダー数名に「こういうシステムを入れようと思うが、何か懸念はあるか」と聞くだけで、抵抗感はかなり和らぎます。

失敗②:機能だけで選んで使いこなせなかった

「シフト管理もできる!プロジェクト別集計もできる!」という多機能なシステムを選んだものの、実際に使うのは打刻と残業集計だけ…というパターンは非常に多いのです。

「今、本当に困っていること」を3つ書き出して、それが解決できるかだけで選ぶほうが失敗は少ないです。

失敗③:経営者・上司への説明が後回しになった

導入コストが発生するため、決裁者への説明は必須です。「月○円かかりますが、集計工数が月○時間削減できます」という数字で見せると承認が取りやすいのです。

試算例:担当者の時給2,000円×集計作業16時間/月 = 月3.2万円のコスト削減効果。システム費用が月1万円なら、差し引き2.2万円の節約になります。


費用の目安:クラウド型の相場

クラウド型勤怠管理システムの費用感は次のとおりです。

従業員規模 月額費用の目安 代表的なサービス
〜30名 無料〜5,000円 freee勤怠管理、ジョブカン(無料プランあり)
30〜100名 5,000〜20,000円 KING OF TIME、ジンジャー勤怠
100〜300名 20,000〜50,000円 SmartHR、TeamSpirit

初期費用(設定費・研修費)が別途かかるケースもあります。見積もりを取る際には「初期費用込みでいくらか」を確認してください。

また、給与計算ソフトと一体になったサービス(マネーフォワード クラウド、freeeなど)を選ぶと、トータルコストを抑えられる場合があります。


まず何から始めるか

この記事を読んで「うちも導入したい」と思ったなら、最初のアクションはひとつです。

「今月の勤怠集計に何時間かかったか、記録してみること」

これが導入の必要性を経営者に説明するときの、一番強い根拠になります。感覚で「大変です」と言っても動いてもらえません。「月に16時間、時給換算で3.2万円のコストがかかっています」と言えば話が変わるのです。

数字が揃ったら、フェーズ0の棚卸しから始めて、ここで紹介した5つの選定基準を使って2〜3社に絞り込んでみてください。無料トライアルは必ず使うこと。触ってみないとわからないことが、必ずあります。

勤怠管理の効率化は、総務DXの入り口としてもっとも成果が出やすい領域のひとつです。Excelで手入力している状況を放置したままだと、法的リスクと人的コストは毎月積み上がり続けます…。

まず1ヶ月、自分の集計工数を記録することから始めてみるのがおすすめです。


関連記事