電子帳簿保存法の対応、総務が最初にやること【2026年版・中小企業向け】

「電子帳簿保存法に対応してください」と突然言われて、何から手をつければいいか分からない…という状態になっていませんか。

上司から「義務化されたから対応しろ」と言われても、法律の文言は難解だし、自社の書類がどの区分に入るのかも判断できない。「税務調査でひっかかったらどうしよう…」という不安だけが先走って、結局後回しにしてしまっているケースは少なくないんですよね。

私もかつて総務として、この法律の対応を一人で任されたことがあります。最初の2週間は国税庁のサイトとにらめっこしながら、どの書類が何の区分に入るのか整理できずに終わってしまいました。

この記事では、電子帳簿保存法の「3区分の全体像」と、総務担当者が最初にやるべきことを順番に整理します。法律の難解な言葉を噛み砕いて、中小企業の総務担当者が一人でも動けるレベルで解説していきます。

この記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務・法律判断については、税理士または専門家への確認を推奨します。

電子帳簿保存法とは?総務担当が知るべき「3区分」

まず、この法律の全体像を理解しましょう。電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、税務に関係する書類をデジタルで保存するためのルールを定めた法律です。

2022年の改正で大きく変わり、2024年1月からは一部が義務化されました。総務が把握すべき内容は、大きく3つの区分に分かれています。

3区分の全体像

区分対象義務・任意主な要件
①電子帳簿等保存PCで作成した帳簿・書類任意(推奨)訂正・削除の履歴が残るシステムで保存
②スキャナ保存紙で受け取った書類をスキャン任意(承認不要)タイムスタンプ付与、解像度200dpi以上など
③電子取引データ保存メール・クラウドで受け取った書類義務(2024年1月〜)検索要件・改ざん防止措置が必要

この3つのうち、③電子取引データ保存だけが義務です。残り2つは「やると税務上のメリットがある」任意の対応になります。

まず「義務対応を確実にこなす」ことを最優先にして、余力ができたら①②に取り組む——これが中小企業の現実的な進め方なのです。

総務が実際に対応すべき業務の範囲

「電子帳簿保存法」と聞くと経理・財務の仕事に聞こえますが、総務も無関係ではありません。むしろ、書類管理の窓口になっている総務担当者が対応の主担当になることが多いです。

総務が関わる代表的な書類は以下のとおりです。

  • 電子で受け取る請求書・見積書(③電子取引データ保存の対象)
  • 労働条件通知書・雇用契約書のPDFやメール送付分
  • 備品購入時のWebショップ注文確認メール・領収書PDF
  • クラウドサービスの利用明細(メール・マイページDL)
  • 出張・交通費の電子領収書

つまり、「メールで届いた請求書をそのまま印刷して紙で保存する」という従来のやり方は、2024年1月以降はNGになったわけです。電子で受け取ったものは、電子のまま保存しなければなりません。

「え、うちはずっと印刷して保存してた…」という状態だったとしたら、今すぐ見直しが必要です。

【区分別】総務が最初にやること

③電子取引データ保存(義務):最優先で対応

まず義務化されている③から手をつけましょう。対応のステップは4つです。

①現状把握 → ②保存場所の決定 → ③検索要件の整備 → ④社内ルール化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

STEP1:電子で受け取っている書類を洗い出す

まず「どんな書類を電子で受け取っているか」を一覧にします。経理・購買・人事などの担当者に聞き込みをして、次の観点で書き出してみましょう。

  • メール添付で届くPDF(請求書、見積書、注文書など)
  • Webサービスのマイページからダウンロードする書類
  • クラウド会計・受発注システムのデータ
  • ECサイトの注文確認・領収書メール

私がこの洗い出しをやったとき、「こんなにあるのか」と正直驚きました。月に50件以上の電子書類が飛び交っていたことに、初めて気づいたのです。

STEP2:保存場所を決める

電子取引データ保存の要件を満たすには、保存場所でデータが改ざんできない状態にする必要があります。主な選択肢は3つです。

  • 専用の電子帳簿保存ソフトを使う: freee、マネーフォワード、弥生など(要件を自動的に満たせる)
  • 共有フォルダ+訂正削除の防止措置: ファイルに書き込み禁止設定をかけ、タイムスタンプを付与
  • クラウドストレージ(Google Drive等)+運用ルール: 検索要件を満たすフォルダ構成にする

中小企業でコストをかけたくない場合、最初はGoogle DriveやOneDriveの共有フォルダを使いながら、運用ルールを整備するやり方が現実的です。ただし、「税務調査が入ったときに説明できる状態か」を常に意識した設計にする必要があります。

STEP3:検索要件を整備する

電子取引データ保存には「検索要件」があります。国税庁の要件では、

  • 日付・金額・取引先で検索できること
  • 日付・金額の範囲検索ができること
  • 2つ以上の項目を組み合わせて検索できること

ただし、売上高が1,000万円以下(基準期間)の小規模事業者は、税務調査時に書類を提示・提出できる場合、検索要件は免除されます。自社の規模を確認しておくと、対応のハードルが下がるケースがあります。

専用ソフトを使えばこの要件は自動的に満たせますが、フォルダ管理でやるなら「20240605_株式会社○○_請求書_55000円.pdf」のようなファイル命名規則を決めておくことで代替できます。

STEP4:社内ルールを文書化して周知する

仕組みを作っても、社内に徹底されなければ意味がありません。最低限、次の内容を文書にまとめて関係者に周知しましょう。

  • 電子で受け取った書類は印刷せずに電子保存すること
  • 保存先フォルダのURL・パス
  • ファイル名の付け方ルール
  • 保存期限(法人税の関係書類は原則7年)

「なんとなく保存している」から「ルールに基づいて保存している」に変えるだけで、万が一の税務調査でも説明できる状態になるのです。

②スキャナ保存(任意):紙書類のデジタル化と併せて検討

スキャナ保存は、紙で受け取った領収書・請求書などをスキャンして電子保存するルールです。義務ではないですが、紙書類の量が多い場合は取り組む価値があります。

主な要件は以下のとおりです。

  • 解像度200dpi以上でスキャンすること
  • スキャン後にタイムスタンプを付与すること(または訂正削除の防止措置)
  • 入力期間の制限(書類受領後おおむね7営業日以内)
  • 適正事務処理要件(定期的な確認・是正)

スキャナ保存は「義務ではないが、紙の原本を廃棄できる」メリットがあります。書類保管スペースに悩んでいる総務担当者には、中長期的に検討してみてほしい対応です。ただし、最初からここに手をつけると工数がかかりすぎるので、まず③の義務対応を完了させてからでいいです。

①電子帳簿等保存(任意):会計ソフトに任せる

PCで作成した帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)を電子保存するルールです。会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を使っていれば、基本的にはソフト側が対応済みです。

「優良な電子帳簿」の要件を満たすと、過少申告加算税が軽減される税制上のメリットがありますが、まず③を固めてからで問題ありません。会計担当者と連携して確認すれば十分です。

中小企業の現実的な対応ロードマップ

「全部一気にやろうとしない」のが一番大切です。実際、私の周りでも「完璧な対応を目指して何もできなかった」という総務担当者を何人も見てきました。

現実的な進め方は次のとおりです。

フェーズ1(〜1ヶ月):義務対応の最低ラインを確保

  • 電子で受け取っている書類の洗い出し
  • 保存フォルダの作成とファイル命名規則の決定
  • 「印刷禁止・電子保存」ルールの社内周知

これだけで、義務化に対する最低限の対応はできます。まず「やっている状態」を作ることが優先です。

フェーズ2(〜3ヶ月):仕組みの精度を上げる

  • 専用ツール導入の検討(freee・マネーフォワード等)
  • 検索要件への対応確認
  • 保存ルールの文書化と社内規程への追加

フェーズ3(〜半年):ペーパーレスとの統合

  • スキャナ保存の導入検討
  • 紙書類の段階的デジタル化
  • 書類保管スペースの削減

このフェーズ3まで進めると、電子帳簿保存法への対応が単なる「義務クリア」ではなく、総務業務の効率化につながる資産になります。

よくある失敗と注意点

失敗①:「まず印刷してから保存」をやめられない

電子で受け取った書類を印刷して紙で保存する習慣は、2024年1月以降は違法になります(正確には法律違反ではなく、要件不備として税務上のリスクがある状態になります)。

「念のため紙も残す」という気持ちはわかりますが、二重管理になる上に義務要件も満たせません。電子で受け取ったら電子で保存するという習慣に切り替えるのが先決です。

失敗②:完璧なシステムを求めすぎる

「ちゃんとしたシステムを入れてからでないと対応できない」と考えて、半年以上何も動かなかった——というケースをよく聞きます。

中小企業の場合、最初は共有フォルダ+命名規則でも十分です。完璧より、「税務調査が入ったときに説明できる状態」を目指すほうが得策です。

失敗③:経理任せにして総務が把握していない

電子帳簿保存法は経理の仕事と思われがちですが、実際には備品購入の電子領収書や、社員が受け取るメールの添付書類など、総務が管理する書類にも適用されます。

経理担当者と連携して「どの書類がどの担当者を経由するか」を整理しておかないと、漏れが発生しやすいのです。

失敗④:保存期間を短く設定してしまう

国税関係書類の保存期間は原則7年です(欠損金が生じた事業年度は10年)。電子データも同じ期間、検索・閲覧できる状態で保管する必要があります。「もう古いから削除しよう」は要注意です。

税理士・専門家への確認が必要な場面

電子帳簿保存法は、自社の状況によって対応が変わる部分も多いです。以下のような場面では、税理士や顧問の専門家に確認することをおすすめします。

  • スキャナ保存で原本廃棄をしたい場合(要件を満たしているか確認が必要)
  • クラウドサービスを保存媒体として使う場合の要件確認
  • 過去の書類(2024年以前)の扱いについて
  • 税務調査で指摘を受けた場合の対応
  • グループ会社・複数拠点がある場合の統一ルール策定

法律の解釈や税務リスクに関しては、専門家の判断に委ねるのが一番安全です。総務担当者が「運用の仕組みを作る」部分を担い、法的判断は専門家に聞く——という役割分担が、実務としてもうまく機能します。

電子帳簿保存法対応で総務業務はこう変わる

対応が進むと、総務の業務にはいい変化が起きます。具体的には次の3つです。

書類の紛失リスクが下がる

紙の書類は破損・紛失のリスクがありますが、電子データで管理すればバックアップが取れます。「あの領収書どこいった…」という事態がなくなるのは、総務担当者として地味に助かります。

書類探しの時間が大幅に減る

ファイル名に取引先・日付・金額が入っていれば、検索で即座に見つけられます。経理から「あの請求書どこ?」と聞かれるたびに棚を漁っていた時間が、劇的に短縮されるのです。

ペーパーレス化が加速する

電子帳簿保存法への対応は、ペーパーレス化推進の「正当な理由」にもなります。「法律で決まっているから」という説明があれば、社内の反対意見も通しやすくなるでしょう。総務のペーパーレス化の進め方はこちらの記事でも詳しく解説しています。

まとめ:今日から動ける3つのアクション

電子帳簿保存法の対応は、一気に完璧にしようとすると動けなくなります。まず「義務である③電子取引データ保存への最低限の対応」を確保することが先決です。

今日から動けるアクションを3つに絞ります。

  1. 電子で受け取っている書類を一覧にする(30分あれば大半は把握できます)
  2. 保存フォルダを作り、命名規則を決める(「日付_取引先_種類_金額」の形式が使いやすい)
  3. 「電子書類は印刷せずに電子保存」を関係者に周知する(メール1本でできる)

この3つを今週中にやり切れば、義務対応のベースはできます。そこからシステム導入やスキャナ保存を検討するかどうかは、自社の規模と余力を見ながら判断するのがおすすめです。

なお、具体的な法律要件や税務上の判断については、必ず税理士や専門家への確認をとってください。自社の状況に合った対応ができるかどうかは、個別の確認なしには言い切れない部分があります。


総務の書類管理全般については、社内フォームの作り方台帳管理の効率化の記事も参考にしてみてください。