「労務管理ツールを入れたいけど、種類が多すぎて何を選べばいいかわからない…」
そう感じているのは、あなただけではないですよね。
ネットで調べると「おすすめ15選」「比較20選」といった記事が山ほど出てきます。でも正直、20個並べられても絞れないんですよ。比較記事を読んだのに、結局何を選べばいいか余計に迷った、という経験ありませんか。
私は総務歴5年で、社内の労務管理ツール選定を3回経験しています。そのなかで気づいたのは、「ツールの良し悪しより先に、自社の条件を整理することが全て」ということでした。
この記事では、ツールを紹介する前に「自社にとっての選定基準」を先に整理し、そのうえで中小企業に合う7つのツールを会社規模別に解説します。
労務管理ツールを選ぶ前に整理すること3つ
ツール比較の前に、この3点を自社で確認してください。ここを飛ばしてツールを選ぶと、「導入したけど使いこなせなかった」という最悪のパターンになります。
- 会社規模(従業員数)
- 予算(月額・年額)
- 必要な機能の優先順位
① 会社規模で「合うツール」は変わる
これが一番大きな分岐点です。従業員数によって、必要な機能・価格帯・導入のしやすさが全く変わってきます。
| 規模 | 目安の従業員数 | 向いているタイプ |
|---|---|---|
| 小規模 | 〜30名 | シンプル・低コスト・操作しやすい |
| 中規模 | 30〜100名 | 機能バランス・拡張性・サポート充実 |
| 成長期 | 100名〜 | API連携・ワークフロー・権限管理 |
30名以下の会社でオーバースペックなツールを入れると、設定に時間がかかりすぎて現場に定着しません。逆に、成長期の会社がシンプルすぎるツールを選ぶと、すぐ機能不足になって乗り換えの手間が発生します。
② 予算の目安を先に決める
労務管理ツールの価格帯は大きく3段階に分かれます。
- 無料〜月額3,000円:小規模向け、機能は絞られる
- 月額5,000〜30,000円:中小企業のメインゾーン、機能と価格のバランスが良い
- 月額30,000円〜:大企業向け、カスタマイズ・導入支援込み
従業員1人あたり月額300〜500円が中小企業の相場感です。50人の会社なら月1.5〜2.5万円ほど。この数字を先に持っておくと、比較表を見るときに絞りやすくなります。
③ 必要な機能を「あれば嬉しい」と「絶対必要」に分ける
労務管理ツールが持つ主な機能は以下のとおりです。
- 入退社手続き(雇用保険・社会保険の申請補助)
- 年末調整のオンライン化
- 給与計算・明細配布
- 勤怠管理との連携
- マイナンバー管理
- 書類のペーパーレス化・電子署名
- 従業員情報の一元管理
全部必要に見えますが、最初から全機能を使いこなす会社はほぼありません。「まず年末調整をなんとかしたい」「入退社手続きを電子化したい」など、1〜2個の課題に絞って選ぶほうがうまくいきます。
労務管理ツール比較7選【一覧表】
上記の選定基準を踏まえて、中小企業で実績のある7ツールを比較します。
| ツール名 | 向いている規模 | 月額費用(目安) | 強み | 無料期間 |
|---|---|---|---|---|
| SmartHR | 30〜500名 | ¥1,650〜/月(基本) | 手続き自動化・使いやすさ | あり(要問合せ) |
| freee人事労務 | 1〜300名 | ¥2,618〜/月 | 会計freeeとの連携 | 30日無料 |
| マネーフォワードHR | 30〜300名 | ¥3,278〜/月 | 給与・勤怠・経費の連携 | 1ヶ月無料 |
| ジョブカン労務HR | 10〜200名 | ¥440/人/月 | シンプル・低コスト | 30日無料 |
| オフィスステーション | 50〜1000名 | ¥330/人/月〜 | e-Gov連携・行政手続き特化 | あり |
| HRMOS労務 | 100名〜 | 要問合せ | 採用・タレントとの統合管理 | あり |
| PaperCont | 〜100名 | ¥1,100〜/月 | 書類管理・電子署名特化 | あり |
それでは、各ツールを詳しく見ていきましょう。
各ツールの詳細解説
① SmartHR|中小企業のデファクトスタンダード
労務管理ツールを検討したことがある人なら、必ず名前が出るのがSmartHRですよね。シェアNo.1というだけあって、操作のわかりやすさと機能のバランスが飛び抜けています。
私のまわりの総務担当者に話を聞くと、「最終的にSmartHRに落ち着いた」という声が多いです。なぜかというと、管理者だけでなく従業員側の操作もシンプルだから。入退社手続きで従業員に情報を入力してもらうとき、使い方を説明しなくても大体の人が操作できます。
向いている会社
- 30〜300名規模で労務管理ツールを初めて導入する
- 入退社手続きのペーパーレス化が最優先
- 年末調整のオンライン化を早急にやりたい
注意点:機能が多いぶん、設定項目もそれなりにあります。最初のセットアップに数日かかることは覚悟しておいてください。
② freee人事労務|freee会計ユーザーならほぼ一択
すでにfreee会計を使っている会社なら、freee人事労務との組み合わせは非常に相性が良いです。給与データが会計に自動連携されるので、月次の仕訳作業がほぼ不要になります。
1〜20名の小規模スタートアップが最初に入れるツールとして、freee人事労務を選ぶケースをよく見かけます。freeeの世界観で全部まとめてしまえる手軽さは、総務専任がいない会社には強みになりますね。
向いている会社
- freee会計をすでに使っている
- 小規模で総務専任がいない(兼務前提)
- 給与計算から経理仕訳まで一括でやりたい
注意点:freee系ツールは「freeeの世界観」に慣れるまで少し時間がかかります。他のクラウドサービスに慣れている人でも、最初は操作に戸惑う場面があります。
③ マネーフォワードHR|給与・勤怠・経費を一気通貫で管理
マネーフォワードクラウドシリーズは、給与・勤怠・経費・会計のすべてをシームレスに連携できるのが特徴です。「とにかくバラバラなシステムを一本化したい」という会社に向いています。
従業員30〜100名の成長期の会社で、バックオフィス全体を整備したいフェーズに強みを発揮します。各モジュールを段階的に追加できるため、最初は労務だけ入れて、後から給与・勤怠を追加するという進め方もできます。
向いている会社
- 給与・勤怠・経費・会計をまとめて整備したい
- バックオフィスのシステム統合が経営課題になっている
- マネーフォワードの他サービスをすでに使っている
注意点:機能が豊富なぶん、全部使おうとすると導入コストが重くなります。使う機能を絞って段階導入するのが得策です。
④ ジョブカン労務HR|低コストでシンプルに始めたい会社向け
従業員1人あたり月440円という価格帯は、コストを抑えたい中小企業にはかなり魅力的ですよね。基本的な手続き書類の電子化・従業員情報管理に絞った設計で、余計な機能がないぶん覚えやすいです。
ジョブカンは勤怠管理・給与計算・採用管理なども別モジュールで提供しているため、ジョブカンで統一したい会社にも選ばれています。「まず何か1つ入れてみたい」という会社の試し打ちとしても使いやすいです。
向いている会社
- 10〜50名規模でコストを抑えたい
- 機能は絞ってよいので操作をシンプルにしたい
- ジョブカンの他サービスと組み合わせたい
注意点:SmartHRと比べると、入退社手続きの自動化度合いがやや弱い印象があります。手続き工数をどこまで削減したいかで評価が変わります。
⑤ オフィスステーション|行政手続きの電子申請に特化
e-Gov(電子政府)連携に強みを持つツールで、社会保険・雇用保険などの行政手続きをオンライン申請したい会社に向いています。従業員の入退社が多い会社や、手続き漏れをなくしたい会社から選ばれることが多いです。
1人あたり月330円〜という価格は業界最安水準のひとつ。50〜300名規模で、特に「行政手続きの電子化」を最優先課題にしている会社にはコスパが高いです。
向いている会社
- 入退社・育休など手続き件数が多い
- e-Govを使った行政申請を効率化したい
- コストを抑えながら行政手続きに特化したい
注意点:UIがやや古さを感じる部分があります。操作性よりも機能・コストを優先する場合に向いています。
⑥ HRMOS労務|採用・タレントマネジメントと統合管理
HRMOSは採用管理・タレントマネジメント・労務管理を1つのプラットフォームで管理できるツールです。「採用から入社後の育成・評価まで、人事全体を一つのシステムで見たい」という会社のニーズに応えています。
100名以上の会社で、HRの全体像を設計したいフェーズに特に強みを発揮します。労務管理単体での機能はSmartHRに劣る部分もありますが、採用〜タレントまで含めたトータルコストで見ると選択肢になります。
向いている会社
- 100名以上でHR全体の統合管理を検討している
- 採用管理・タレントマネジメントと労務を一元化したい
- 将来的なHR DXのプラットフォームとして長期利用を見据えている
注意点:価格は要問合せ。中小企業の相場より高めになることが多いです。まず規模感と予算を確認してから問い合わせるのがおすすめです。
⑦ PaperCont|書類管理・電子署名に特化した軽量ツール
「労務管理全体ではなく、とにかく書類のペーパーレス化・電子署名だけをやりたい」という会社向けのツールです。月額1,100円〜という価格帯は、試験導入にも踏み切りやすいです。
雇用契約書・誓約書・社内規程などをPDFで管理・電子署名できる機能が中心。フルセットの労務管理ツールは不要だけど、紙の書類をなくしたいという場合のピンポイント解決策として使えます。
向いている会社
- 書類の電子化・電子署名だけが目的
- 小規模で大がかりなツール導入は避けたい
- 既存の労務管理フローは変えずに書類だけ電子化したい
注意点:手続き自動化・行政申請連携などの機能はありません。課題が書類管理に特化していない場合は他ツールを選ぶほうがよいです。
会社規模別おすすめまとめ
比較表と各ツールの解説をふまえて、会社規模別のおすすめを整理します。
〜30名の小規模企業
第一推奨:ジョブカン労務HR または freee人事労務
この規模では、とにかく「低コストで始められる」「操作がシンプル」が優先事項になります。freeeで会計管理している会社はfreee人事労務、そうでなければジョブカンがコスパで選びやすいです。
「書類の電子化だけできればいい」という場合はPaperContが現実的な選択肢になります。
30〜100名の成長期企業
第一推奨:SmartHR(迷ったらこれ)
この規模が労務管理ツールの恩恵を最も受けやすいゾーンです。入退社が増え、年末調整・社会保険手続きの件数が増えてきたタイミングでSmartHRを入れると劇的に楽になります。
マネーフォワードで給与・経費・会計をまとめたい会社はマネーフォワードHRも有力です。行政手続きの件数が特に多い会社はオフィスステーションも比較対象に入れる価値があります。
100名以上の中堅企業
第一推奨:SmartHR または HRMOS労務
この規模になると、権限管理・ワークフロー・API連携などの要件が出てきます。SmartHRは100名以上でも十分に対応しますが、採用・タレントマネジメントとの統合を視野に入れるならHRMOSを比較検討してみてください。
導入前に確認しておくべき注意点
私自身、ツール選定を3回経験して失敗した点も正直に伝えておきます。
注意点1:既存システムとの連携を先に確認する
勤怠管理システムや給与計算ソフトがすでにある場合、連携できないと二重入力が発生します。「連携できますか?」をベンダーに先に確認するのが鉄則です。
私の場合、既存の勤怠管理ツールと新しい労務管理ツールが連携できず、1年間ほど手動でデータを移していました。あれは本当に非効率だったんですよね…。
注意点2:従業員への周知・教育コストを甘く見ない
ツールを入れても従業員が使わなければ意味がありません。「操作方法がわからない」という問い合わせが導入直後の1〜2ヶ月は確実に増えます。
操作マニュアルの作成・説明会の実施など、従業員への周知コストを最初から計画に入れておくのがおすすめです。SmartHRは操作が直感的なので、この周知コストが比較的少ないのが選ばれる理由のひとつでもあります。
注意点3:無料トライアルを必ず使う
比較記事を読んで「これにしよう」と決めても、実際に触ってみると「思ったより操作しにくい」と感じることがあります。主要ツールは30日前後の無料トライアルを提供しているので、必ず試してから契約してください。
特に確認してほしいのは「従業員が操作するシーン」。管理者画面ではなく、実際に従業員に試してもらって反応を見てから決めるのが一番確実です。
注意点4:サポート体制を確認する
労務管理は法改正への対応が必要な場面があります。「法律が変わったとき、ツール側がどう対応してくれるか」「問い合わせへのレスポンスは早いか」を確認しておくと安心です。
SmartHRは法改正対応の情報提供が手厚いという評判が多いです。freeeもfreeeのコミュニティ・サポートが充実しているため、初めてのツール導入でも安心感があります。
まとめ:迷ったらSmartHRから始めるのが一番得策
改めて整理します。
- まず「会社規模・予算・やりたいこと1〜2個」を先に決める
- freee会計ユーザーならfreee人事労務、バックオフィス統合ならマネーフォワードHR
- コスト重視の小規模ならジョブカン、行政手続き特化ならオフィスステーション
- どれにすべきか迷ったら、SmartHRの無料トライアルから始めるのが一番現実的
ツール選定は、機能や価格だけでなく「現場に定着するか」が全てです。比較記事を読んで頭で決めるより、実際に触って「これなら使えそう」と感じるものを選んでください。
総務の労務管理業務が効率化されると、手続きの漏れが減り、社員対応の時間を本来の業務に使えるようになります。導入する価値は十分にあるので、まずは無料トライアルを試してみてください。