電子契約を中小企業が導入するとき、最初にやるべきこと【5ステップ】

「電子契約を導入しよう」と会社で決まったのに、何から手をつければいいかわからない…と止まってしまっていませんか。

法律の話が難しそうで怖い、取引先が紙にこだわっていて進められない、そもそも社内に賛成してくれる人がいない。この3つの壁に当たって、電子契約の話がなかったことになっている中小企業は、正直かなり多いんですね。

私自身、総務として5年間勤務するなかで、電子契約の導入を2度担当しました。最初の挑戦では上司に「リスクが高い」と却下され、2度目でようやく導入にこぎつけた経験があります。失敗した理由も、成功した理由も、実感として持っています。

この記事では、IT担当者がいない中小企業の総務担当者を想定して、電子契約を導入するための具体的な5ステップと、よくある失敗のパターンを解説します。

最後まで読めば、「何から始めればいいか」が明確になり、明日からでも動き出せる状態になるはずです。

中小企業で電子契約がなかなか進まない本当の理由

電子契約の必要性は感じている。でも前に進めない。この状況、なぜ起きるのでしょうか。

理由は4つです。①法的な不安、②取引先の問題、③社内の反発、④費用感の不明確さ。それぞれ詳しく見ていきましょう。

「本当に法的に有効なの?」という不安

「電子契約って、裁判になったときに証拠になるの?」という疑問は、導入を検討している方なら誰でも一度は思うところではないでしょうか。

結論から言うと、適切な電子署名が付与された電子契約書は、法的に有効です。2001年に施行された電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)と、2005年施行のe-文書法により、電子文書に対して紙と同等の法的効力が認められています。

ただし「適切な電子署名」という条件が重要です。メールの承認だけでは不十分で、認定認証機関が発行する電子証明書を使った電子署名が求められます。市販の電子契約サービスはこれを自動的に担保してくれるので、あとはサービスを使うだけで問題ないんですね。

取引先が「うちは紙でないと」と言っている

中小企業の電子契約導入で最もよく聞くブロック要因が、これです。「取引先の大手企業が紙を求めている」「下請け先が電子に対応していない」というケースです。

ここで多くの担当者が諦めてしまうのですが、実は全取引先を一斉に電子化する必要はないのです。社内の稟議書・雇用契約・業務委託契約など、まず社内完結できる書類から始める方法があります。これだけでも年間の印紙税と郵送費で、数十万円のコストが削減できるケースが少なくありません。

「誰がやるの?」という担当問題

中小企業では総務が一人体制、あるいは兼任という会社が多いですよね。そこに「電子契約の導入もやって」と言われると、「私には無理です」となりがちです。

ただ、近年の電子契約サービスはセットアップの手間が大幅に簡略化されています。クラウド型サービスの場合、アカウント登録から最初の契約書送付まで、最短で数時間でできるものもあります。私の経験では、弥生シリーズと同程度の操作感のものが多いです。

費用感が読めない

「電子契約システムって高そう」というイメージを持っている方は多いですが、実際には無料プランから始められるサービスが複数あります。費用感については後の章で具体的に紹介します。

電子契約の仕組みと法的根拠をサクッと理解する

難しい話は最小限にしますが、ここだけ理解しておくと社内説得がぐっとラクになります。

電子署名法とe-文書法の基本

電子契約の法的根拠となる法律は2つあります。

  • 電子署名法(2001年):電子文書に本人確認を付与する「電子署名」に法的効力を認めた法律
  • e-文書法(2005年):税務・会計などの法定保存書類を電子データで保存することを認めた法律

この2法律により、電子契約書は紙の契約書と同等の法的効力を持ちます。さらに2022年の電子帳簿保存法改正で、電子取引データの電子保存が義務化されたため、むしろ電子化しないリスクの方が高まっています。

紙の契約と電子契約の実務上の違い

紙の契約書との比較を整理すると次のとおりです。

項目紙の契約電子契約
法的効力ありあり(電子署名付き)
印紙税必要(数百〜数万円/通)不要
締結にかかる時間数日〜2週間数時間〜即日
保管コスト物理的なスペース必要クラウド上で管理
検索性低い高い(キーワード検索可)

印紙税が不要になるのは大きい

電子契約の導入効果として見落とされがちなのが印紙税の節約です。

例えば、金額100万円〜500万円の請負契約書には2,000円の印紙が必要です。月に50件の契約を結ぶ企業なら年間で120万円の印紙税がかかっています。電子契約にすれば、この120万円が丸ごとゼロになるのです。

契約件数が多い会社ほど、電子契約の費用対効果は劇的に改善します。

中小企業が電子契約を導入する5ステップ

理屈は理解できた。では実際どう動けばいいのか。5つのステップに分けて説明します。

Step 1:契約書の棚卸し(何を電子化するか決める)

最初にやることは、いきなりサービスを選ぶことではありません。「自社にはどんな契約書があって、そのうち何を電子化するか」を整理することです。

私が担当したときは、まず1ヶ月間の契約書類の流れをすべてリストアップしました。雇用契約書、業務委託契約、秘密保持契約(NDA)、注文書、社内稟議書…など、思っていた以上に種類がありました。

棚卸しができたら、以下の軸で優先度をつけます。

  • 社内完結できるもの(雇用契約書・社内稟議など)→ 優先度:高
  • 取引先も電子化に積極的なもの → 優先度:中〜高
  • 相手が紙を求めているもの → 優先度:低(後回し)

まず社内完結できる書類だけ電子化するだけでも、業務効率は確実に上がります。

Step 2:サービス選定(費用・機能・相手方対応を確認)

棚卸しが終わったら、ようやくサービス選定です。中小企業に合ったサービスを選ぶ際のポイントは3点です。

ポイント1:相手方がアカウント不要で署名できるか

取引先に「まず登録してください」と言うのは摩擦が生まれます。クラウドサインやfreeeサインのように、相手方がアカウント登録なしでメールからそのまま署名できるサービスが中小企業には向いています。

ポイント2:初期費用ゼロ・月額費用が安いプランがあるか

試験運用をするためにも、まずは低コストで始められるプランを選ぶことをおすすめします。月5件程度なら無料で使えるサービスもあります。

ポイント3:電子帳簿保存法に対応しているか

2022年改正の電子帳簿保存法では、電子取引データの適切な保存が義務付けられました。対応サービスを選ぶことで、税務リスクを避けられます。

Step 3:社内説得と稟議(上司・現場への伝え方)

ここが実は最も難しいステップです。電子契約の導入が止まっている会社の多くは、技術的な問題ではなく社内調整の問題で詰まっているのです。

私が2度目の挑戦で成功したのは、上司への説明方法を変えたからです。最初の失敗時は「効率が上がります」という話をしていました。2度目は「年間でいくら節約できるか」を数字で示しました。

上司説得に効くセリフの例:

「現状、月30件の契約書に印紙税が月6万円かかっています。電子契約サービスの月額費用は3万円なので、初年度から毎月3万円のプラスになります。導入コストは半年で回収できる計算です。」

現場担当者への説得は「作業が減る」という視点で伝えます。

「今は契約書1件あたり、印刷・押印・郵送・ファイリングで30分かかっています。電子契約にすると5分で完結します。月30件なら月12.5時間の削減です。」

Step 4:取引先への説明と同意取得

取引先への説明は、丁寧さとシンプルさが重要です。難しい法律用語を並べるより、「相手に何を求めるか」を明確にした方がスムーズです。

取引先への案内メールの例:

「この度、弊社では契約書の締結を電子化することになりました。今後はクラウドサイン(無料でご利用いただけます)を使った電子契約をお願いしたく存じます。操作はメールに届いたリンクをクリックするだけで、アカウント登録は不要です。ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。」

「アカウント登録不要」「無料」という2点を明示するだけで、相手の心理的ハードルが大幅に下がります。

Step 5:試験運用と本格展開

いきなり全書類を電子化しようとするのが、よくある失敗パターンです。まず1〜2種類の書類に絞って1ヶ月間試験運用し、問題がなければ段階的に対象を広げる方が確実です。

試験運用の対象として始めやすいのはNDA(秘密保持契約)です。件数が多く、内容が定型化されており、かつ相手方も電子化に抵抗感が少ないことが多いためです。

試験運用の評価軸として確認すること:

  • 取引先からのクレームや問い合わせはあったか
  • 締結までのリードタイムはどれくらい短縮されたか
  • 担当者の操作に問題はなかったか
  • 書類の保管・検索は想定どおり機能しているか

1ヶ月後に問題がなければ、他の書類カテゴリにも順次展開していきます。

中小企業向け電子契約サービスの費用感

「いくらかかるのか」は導入判断に直結する問題です。主なサービスの費用感を整理します。

無料・低コストで始められるプラン

以下は月数件程度の少量利用や試験運用に向いているプランです。

  • クラウドサイン(弁護士ドットコム):フリープランは月5件まで無料。送信者は登録が必要だが、受信者(取引先)はアカウント不要
  • freeeサイン:freee会計利用企業は連携が容易。小規模プランから月額数千円〜
  • DocuSign:グローバルスタンダード。30日無料トライアルあり

月額費用の目安(件数別)

月間送信件数費用目安備考
5件以下0〜無料クラウドサインフリープランなど
10〜30件月額3,000〜10,000円クラウドサイン・freeeサインなど
30〜100件月額10,000〜30,000円法人プラン・管理機能強化
100件超要見積もりエンタープライズプラン

月30件・2,000円の印紙税なら年間72万円の削減効果です。月額1万円のサービスを使っても、差し引き60万円のプラスになります。正直に言えば、費用面で導入をためらう理由はほとんどないのです。

中小企業が電子契約で失敗しやすいポイント3つ

導入を後悔しないために、よくある失敗パターンを知っておきましょう。

失敗1:取引先への説明を後回しにした

「まず社内で整備してから取引先に連絡しよう」と考えて、準備を完璧にしてから取引先に通知するケースです。取引先からは「急に変えられた」「準備できていない」と反発が出やすいのです。

取引先への事前連絡は、社内の稟議が通った時点でさっさとやるのが一番得策です。「○月から順次電子化を進めます」という方向感だけ伝えておけば、相手も心構えができます。

失敗2:全書類をいっぺんに電子化しようとした

「どうせやるなら全部」と、雇用契約・業務委託・注文書・社内稟議…と一気に対象を広げてしまうパターンです。担当者の負荷が一気に上がり、途中で頓挫することが多いんですね。

前述のStep 5で書いたように、まずNDAだけ、次に業務委託、次に雇用契約…と段階的に広げる方が確実に定着します。

失敗3:セキュリティ設定を業者任せにした

「クラウドサービスだからセキュリティは大丈夫だろう」と思い込み、アクセス権限の設定を確認しないまま使い始めるケースです。退職者のアカウントが残ったまま、というトラブルが発生しやすいのです。

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