「社内フォームを作りたいけど、何のツールを使えばいいのかわからない…」と感じていませんか。
紙の申請書がいつまでも回ってくる、Excelファイルをメールで集めて手作業で集計している、問い合わせをメールアドレス1つで受けているので誰がどの件を対応中か把握できない…。そういった状況を変えようとして「フォームを作ろう」と調べ始めたものの、検索すると出てくるのはMicrosoft FormsかGoogleフォームの操作解説ばかり。どちらを選べばいいか、使い方より先に迷ってしまうのではないでしょうか。
この記事でわかることは次の3点です。
- 職場のIT環境(M365 / Gsuite / どちらもなし)別に「どのツールを選ぶか」の判断基準
- Googleフォームを使った基本的な作り方手順(申請書・問い合わせ受付の質問設計例つき)
- 作った後に後悔しないための権限設定・運用の注意点
読み終わるころには、自分の職場でどのツールを使って何を最初に作るかが決まっている状態になるはずです。
社内フォームが使われる4つの場面
「社内フォーム」と一言で言っても、用途によって質問設計や共有方法が変わります。自分の職場でどれを作りたいのかを最初に絞っておくと、ツール選びもスムーズです。
申請書フォーム:紙の回覧を完全になくせる
有給申請・経費精算・備品購入・休日出勤届など、社員が上司や管理部門へ申請するフォームです。提出後に「上司確認→承認」のフローが発生するため、「回答が届いたら担当者にメール通知が届く」設定がセットになります。紙の回覧ルートをそのままデジタルに置き換えられます。
問い合わせ受付フォーム:メールの一本化より整理しやすい
総務・情報システムへの問い合わせを受け付けるフォームです。「PCが壊れた」「パスワードがわからない」「社内規則について教えてほしい」など、件名と内容と連絡先をまとめて送ってもらう形が基本です。メールと違い、問い合わせ種別で絞り込んで集計できるため対応漏れを把握しやすくなります。
アンケート・満足度調査:集計が自動になる
従業員満足度・研修の振り返り・社内イベントの参加意向確認など、複数人から同じ形式で回答を集める用途です。回答がスプレッドシートに自動転記されるため、手作業の集計が不要になります。
チェックリスト・点検記録・日報:紙の記録票をデジタル化できる
製造現場の点検記録・設備異常の報告・日報提出など、毎日・毎週繰り返す記録業務です。入力データがスプレッドシートに蓄積されるため、後から集計して傾向を分析できます。私の職場でも設備点検記録を紙からフォームに切り替えたことで、月次集計にかかっていた1〜2時間が不要になりました。
職場のIT環境別:おすすめフォームツール
どのツールを選ぶかは、「機能が多いから」ではなく「すでに使っているツールと連携できるから」で決めるのが一番得策です。導入コストも運用定着率も、既存環境との相性が大きく影響します。
| 職場のIT環境 | 推奨ツール | 理由 |
|---|---|---|
| Microsoft 365(Teams・Outlook・SharePoint)を使っている | Microsoft Forms | M365アカウントでそのまま使える・SharePointやTeamsと自然に連携する |
| Google Workspace(Gmail・Googleドライブ)を使っている | Googleフォーム | Googleアカウントで使える・スプレッドシートに回答が自動転記される |
| どちらも使っていない・個人Gmailだけある | Googleフォーム(無料) | 個人Gmailでも無料で使える・まず試すならここから |
| 承認フローまで組み込みたい・本格的な申請管理をしたい | kintone | フォーム+ワークフロー+DBが一体化・月額費用が発生するが本格運用向け |
M365導入企業はMicrosoft Formsがそのまま使える
Microsoft 365のライセンスがあれば、Microsoft Formsは追加費用ゼロで使えます。社員がTeamsでやり取りしている環境なら、フォームのリンクをTeamsのチャネルに貼るだけで展開できます。回答データはExcelに書き出せるため、すでにExcelで集計している担当者なら違和感なく使えます。
Google Workspace環境ならGoogleフォームが最速
GoogleドライブやGmailを会社全体で使っているなら、Googleフォームが最速の選択肢です。フォームを作成すると、回答がGoogleスプレッドシートに自動で転記されます。スプレッドシートをそのまま集計表として使えます。
どちらも使っていない環境はGoogleフォーム(無料)から始める
社内にグループウェアがない・個人Gmailだけある、という中小企業も多いです。私の職場(製造業・社内のグループウェアがなかった時期)もGoogleフォームの無料版から始めました。個人Gmailアカウントがあれば今日から使えます。1〜2年後に会社全体でGoogle Workspaceを導入したタイミングで組織アカウントに移行できたので、まず試す段階としては個人アカウントで十分でした。
承認フローまで組み込みたいならkintoneを検討する
「フォームで受け取るだけでなく、上司が承認ボタンを押したら次の担当者に通知が行く」という仕組みまで必要なら、kintoneが現実的な選択肢です。月額費用はユーザー1名あたり1,500円前後からで、10〜30名規模で申請フローを標準化したい場合に費用対効果が出やすいです。ノーコードで設計できますが初期設定の学習コストがあるため、「まず試す」フェーズではなく「本格導入」フェーズ向けです。
社内フォームの作り方手順(Googleフォーム編)
ここからは、最も始めやすいGoogleフォームを使った基本手順を説明します。M365環境の方も、操作の流れはほぼ同じです(回答先がGoogleスプレッドシートではなくOneDriveのExcelになるイメージです)。
ステップ1:フォームを新規作成する
Googleドライブ(drive.google.com)を開き、左上の「新規」→「その他」→「Googleフォーム」をクリックします。テンプレートギャラリーもありますが、最初は空白から作るほうが構成を自由に設計できます。
フォームのタイトルと説明文を入れます。「何のためのフォームか・誰が見るか・回答期限があるか」を書いておくと、受け取った社員が安心して使えます。
ステップ2:質問と選択肢を設定する(用途別の質問例あり)
質問形式は用途に合わせて選びます。よく使う3種類は次のとおりです。
- 短文回答(名前・部署・連絡先など1行で入力するもの)
- ラジオボタン(はい/いいえ・種別選択など、選ばせるもの)
- 段落(問い合わせ内容・詳細説明など、長文入力が必要なもの)
「必須」のトグルをオンにすると未入力での送信を防げます。氏名・部署・用件は必須にしておくと、後から集計したときに空欄だらけにならずに済みます。
【用途別の質問項目例】
有給申請フォームなら次の5項目が基本セットです。
- 氏名(短文・必須)
- 部署(短文・必須)
- 取得希望日(日付・必須)
- 取得日数(ラジオ:0.5日 / 1日 / 複数日)
- 理由(段落・任意)
問い合わせ受付フォームなら次の5項目が基本セットです。
- 氏名(短文・必須)
- 部署(短文・必須)
- 問い合わせ種別(ラジオ:PCトラブル / 社内手続き / 設備・備品 / その他・必須)
- 内容(段落・必須)
- 緊急度(ラジオ:急ぎ / 通常 / いつでも可)
問い合わせ種別をラジオボタンにしておくと、スプレッドシート上でフィルタリングするだけで「今月PCトラブルが何件あったか」を確認できます。自由記述だけにすると、後から仕分ける手間が発生するので注意です。
ステップ3:回答先(スプレッドシート)と紐付ける
フォーム上部の「回答」タブを開き、スプレッドシートアイコン(「スプレッドシートにリンク」)をクリックします。新しいスプレッドシートを作るか、既存のシートに連携するかを選べます。設定後は、フォームに回答が届くたびにスプレッドシートの1行にデータが追加されるようになります。
メール通知を受け取りたい場合は、スプレッドシートの「ツール」→「通知ルール」から「回答が届くたびに通知」をオンにします。問い合わせや申請の受け取り漏れを防ぐために、担当者全員のメールアドレスを通知先に入れておくことをおすすめします。
ステップ4:共有設定と社内公開範囲を決める
フォーム右上の「送信」ボタンからURLをコピーできます。このとき、アクセス権の設定が最も重要です。
- 「リンクを知っている全員が回答可能」→ 社外からも入力できる(注意が必要)
- 「〇〇の組織内ユーザーのみ」→ Googleアカウントでログインした社内の人だけに制限できる
社内専用フォームの場合は、組織アカウントでの制限をかけることを強くおすすめします。理由は次のセクションで詳しく説明します。
社内フォームを使い続けるための3つの注意点
フォームを作った後に「こんなはずじゃなかった」という問題は、大体3パターンに集約されます。どれも事前に対策できるので、最初の設定時に確認してください。
注意点1:権限設定のミスで社外に公開してしまう
私が支援した別の職場(製造業の総務部門)で実際にあった事例です。「社内問い合わせ受付フォームを作ったら、社員以外からも大量の問い合わせメールが届くようになった」という報告が来ました。調べてみると、共有設定が「リンクを知っている全員」のままになっており、URLが何かの経路で外部に出回っていたのです。
対策は2点です。
- 組織アカウント(会社用Googleアカウント)がある場合:「組織内のユーザーのみ」に制限する
- 個人アカウントで作る場合:フォームを複数人(自分+後任者候補)で「共同編集者」として共有し、担当者1人だけに権限が集中しないようにする
個人アカウントで作ったフォームは、担当者が退職したときにアクセスできなくなるリスクがあります。最初から共有所有者を2名以上設定しておくと、引き継ぎの問題を防げます。
注意点2:回答データが溜まるだけで誰も見ない状態になる
スプレッドシートへの自動転記を設定しても、「誰がいつ見るか」を決めていないと、回答が届いても放置されます。特に問い合わせ受付フォームは、担当者が通知メールを確認する習慣がないと「フォームを送ったのに返事がない」という苦情に発展します。
フォームを作る前に「回答担当者は誰か・何営業日以内に返答するか」を決めてから展開するのが一番得策です。特にアンケート系は「集計して何の資料に使うか」まで決めておかないと、労力に見合わない結果になります。
注意点3:回答形式が雑で集計に手間がかかる
「問い合わせ内容を自由記述で入力してください」だけにすると、集計しようとしたときに内容の仕分けに手間がかかります。問い合わせ種別をラジオボタンで先に選ばせると、スプレッドシートでフィルタリングするだけで件数が把握できます。
私が最初に作った設備異常報告フォームは自由記述のみにしたため、後から設備番号欄を追加する作業が発生しました。「1か月後に自分がこのスプレッドシートで何を分析したいか」を想定してから質問を設計すると、後から後悔しにくいのです。
フォームをもっと活用したい人への次のステップ
Googleフォームで始めて「もう少し自動化を進めたい」「データ集計の手間をさらに減らしたい」という段階になったら、次の選択肢があります。
フォームのデータをPythonで自動集計・分析したい
スプレッドシートに溜まった回答データをPythonで取得して、集計・グラフ化・レポート出力まで自動化できます。毎月同じフォームのデータを集計している業務なら、Pythonスクリプトを1本書くだけで繰り返し作業を省けます。
詳しくはStreamlitで業務アプリを作る方法の記事で具体的なコードと手順を紹介しています。
入力フォームをWebアプリとして社内に独自展開したい
Googleフォームでは要件が足りない・社内サーバーで動かしたい・細かいバリデーションや自動処理を組み込みたい、という場合はPython(Flask)でWebアプリとして作る方法があります。非エンジニアでも動かせる最小構成から始める手順をFlask 社内ツール 作り方の記事でまとめています。
まとめ:今日から始める社内フォームの最初の1手
社内フォームを作る最初の判断は「どのツールを使うか」です。ここが決まらないまま操作マニュアルを読んでも前に進みません。
| 職場の環境 | 最初の1手 |
|---|---|
| M365を使っている | Microsoft FormsでTeamsに貼れる問い合わせフォームを1つ作る |
| Gsuiteを使っている | GoogleフォームでスプレッドシートにつながるフォームをGドライブで作る |
| どちらもない | 個人Gmailで試作→共同編集者を設定して退職リスクを防ぐ |
| 本格的な申請フローが必要 | まずGoogleフォームで業務フローを確認してからkintone検討に進む |
まずは「質問5項目以内のシンプルなフォームを今日中に1つ作る」ことから始めてください。完璧な設計で始めようとすると最初の1個が出来上がるのに1週間かかります。実際に使ってもらいながら改善するほうが、早く定着します。
有給申請・問い合わせ受付・点検チェックリストなど業務別の質問設計テンプレートはNote記事として公開を準備しています。「設計から始めるのが面倒」という方はそちらも参考にしてください。