製造業の手計算が面倒だったのでWebツールを作った話|現場の「毎回めんどくさい」を解決するまで

「また同じ計算か…」
「これ最新か?」
と思いながらExcelを開いたことはありませんか。

製造業の現場では、毎日同じような計算を手作業で繰り返すシーンが山ほどあります。私はフィルムパッケージ関係なので、重量、巻き径、単位換算などなど…。担当者が変わるたびに式の意味を説明して、またミスが出て、また修正して。私が生産管理を担当していた7年間、ずっとそれを繰り返してきました。

「この計算、一度Webにしてしまえば全員が使えるのに」と思い始めたのは、同じ問い合わせにうんざりした日のことです。

この記事では、製造業で手計算が面倒だった私が、なぜWebツールを作ることにしたのか、どうやって作ったのか、非エンジニアでも実際に作れるのかを、体験をもとに書きます。


結論、全員が同じ答えを出す安心感

製造業の手計算は、一度Webツールにしてしまえば全員が同じ答えを出せるようになります。

エンジニアでなくても、生成AIを使えばフォーム入力→計算結果表示のWebツールは数時間で作れます。私が作った filmtools.jp は、そのやり方で現場の計算を一本化したものを公開しています。※業界一般的な計算です。


製造業の現場で「手計算の地獄」に7年間いた話

フィルムパッケージ業界は、計算式が無数にある

フィルムパッケージの製造現場では、ちょっとした数値を出すだけでも計算が必要です。

  • 製品展開図サイズ計算
  • 比重と面積から重量を出す
  • 単価計算の単位変換

単価の単位が一番厄介でした。業者によってcc, m2など違います。「蓮」という業界特有の単位もありますので毎回計算して変換してました。

覚えればどれも難しい計算ではありません。でも、毎回Excelを開いて式を探して、数値を入力して、という手順が積み重なる。しかも聞く人によって使う式が微妙に違う、という状況が7年続きました。

「あの式、どこのファイルに入ってる?」が口癖になっていた

一番つらかったのは、Excelファイルの散在です。「重量計算.xlsx」「計算_最新版.xlsx」「計算_最新版2.xlsx」「計算_final.xlsx」。こういったファイルが共有フォルダの中にいくつも存在していて、それも部署ごとに設置され・・・。

どれが正しいのかわからない状態になっていました。

実際に、旧バージョンの計算式を使い続けた結果、見積もりの数値がズレていたことが3回あったことを覚えています。そのうち1回はお客様への見積もりに影響が出て、修正対応が発生した苦い記憶です。

問題は「計算式の難しさ」ではなく「共有のしにくさ」だった

手計算が面倒な本当の理由は、計算そのものが複雑なのではなく、

「正しい式をみんなが使える状態にできていない」

ことでした。

個人のExcelに閉じてしまうと、属人化が進む。
共有フォルダに置いても、バージョン管理ができない。
誰かが更新すると他の人が古い式を使い続ける。

「これはもうWebにしないとダメだ」と思ったのは、この問題を解決する手段がWebツール以外には見当たらなかったからです。


filmtools.jpを作ることにした経緯

最初のきっかけは「自分だけが使うツール」として作り始めた

最初から「公開しよう」と思っていたわけではありません。

生産管理を担当していた頃、自分の作業用にJavaScriptで簡単な計算フォームを作ったのが始まりです。HTMLファイル一枚に、入力欄と計算式を書いて、ブラウザで開くだけのものでした。

それを職場のメンバーに見せたら「それ、みんなで使えたらめっちゃええやん。」と聞かれました。その一言がきっかけです。

「個人ツール」から「共有ツール」にするためにWebサイト化した

ローカルのHTMLファイルをチームで使うのは難しいです。Windowsのパスが違ったり、ファイルをコピーしたら更新が届かなくなったりする。「Web上に置けば、URLを送るだけで全員が同じものを使える」という発想でサイト化しました。

それが filmtools.jp です。フィルムパッケージ業界に特化した計算ツールを、ブラウザから誰でも使える形で公開しています。

生成AIのおかげで、作る速度が10倍になった

正直に言うと、プログラミング(Vue.jsやデプロイ)の知識は独学です。昔は1つのツールを作るのに1週間かかっていました。今は生成AIにツールの仕様を渡せば、コードのベースが数分で出てきます。あとは動作確認と修正をするだけ。

「AIがあれば作れる」という実感があったので、ツールの種類を一気に増やすことができました。


例えば、以下のようにChatGPTにお願いしたら以下ファイルを作成してくれました。専門用語がありますが、業界的にかなり基礎的で誰でもできる内容です。

フィルムの巻径から長さを算出する計算をしてください。
単位は、厚み=ミクロン、巻径=mm、長さ=m
紙管も考慮してください。

生成されたコードは以下です。

/**
 * 巻径から長さを算出する
 * L = π × (D² - D_core²) / (4 × t)
 * 
 * @param {number} thickness - 厚み (μm)
 * @param {number} coreSize - 紙管サイズ (inch)
 * @param {number} diameter - 巻径 (mm)
 * @returns {number} 長さ (m)
 */
export const calculateLength = (thickness, coreSize, diameter) => {
  const t = thickness / 1000 // mm
  const D_core = coreSize * 25.4 // mm
  const L = (Math.PI * (Math.pow(diameter, 2) - Math.pow(D_core, 2))) / (4 * t)
  return Math.round(L / 1000 * 10) / 10 // m単位に変換し、小数点第1位で丸め
}

非エンジニアでもWebツールは作れるのか

結論:作れます。ただし「何を作るか」の設計が9割

先述のように、技術的なハードルは、生成AIがほぼ越えてくれます。「この入力欄に数値を入れたら、この計算式で結果を出して表示してほしい」という仕様を伝えれば、HTMLとJavaScriptのコードは出てきます。

私の場合、最初のツールは以下の流れで作りました。

ステップ内容時間
Step1計算式を紙に書き出す10分
Step2仕様をChatGPTに伝える15分
Step3生成されたコードをHTMLファイルに貼る10分
Step4ブラウザで動作確認・修正30分
Step5GitHub Pagesで公開20分

合計2時間もかかりませんでした。

最初に詰まるのは「仕様の言語化」だった

ChatGPTへの伝え方で一番悩んだのは、計算式の説明方法です。「フィルムの重量は、面積×厚み×比重で出る」だけでは伝わらない場面がありました。

そういった場合はこのテンプレートを参考にしてください。
ほぼ一発で意図したコードが出てきます。

以下の仕様で計算ツールを作ってください。
HTMLとJavaScriptで書いてください。

【ツールの目的】
(例:フィルムの重量を計算する)

【入力項目】
- 面積(㎡)
- 厚み(μm)
- 比重(数値)

【計算式】
重量(kg) = 面積(㎡) × 厚み(m) × 比重 × 1000

【出力】
計算結果を「重量:〇〇 kg」の形式で表示する

【備考】
- スマートフォンでも使いやすいシンプルなデザイン
- 数値以外が入力された場合はエラーを表示する

公開方法はGitHub Pagesが一番手軽だった

HTMLファイル1枚のツールなら、GitHub Pagesに置けば無料で公開できます。サーバーの設定や費用は一切不要です。URLを共有するだけで、チーム全員が同じツールを使えます。

複数のツールをまとめたサイトにしたい場合は、Netlifyが便利です。ドラッグ&ドロップでデプロイできます。


filmtools.jpで実際に解決したこと

計算ミスが月5回から0回になった

サイト公開後、計算ミスに関する問い合わせがゼロになりました。以前は月に3〜5件、「数値がおかしい」という確認が来ていました。原因のほとんどが、古いExcelを使っていたか、手入力でミスしていたかでした。

Webツールにすることで、全員が同じ計算式を使うようになり、この問題が消えました。

「式どこにある?」という質問がなくなった

URLを送れば終わりです。「計算ツール、また共有して」という連絡が来ることもなくなりました。ブックマークしてもらえば、次からは自分で開いてくれます。

属人化が解消された

私が担当を離れても、ツールはそのまま動き続けます。計算の中身が変わったときはサイトを更新するだけで、全員が最新版を使える状態になります。

メンテナンス性も抜群です。


プログラミングを学んでよかったと感じる理由

スキルが「武器」になる瞬間がある

プログラミングを独学で始めた最初の頃、「これ仕事で使えるのかな」と思っていた時期がありました。でも今は明確に「使える」と断言できます。

製造業でプログラミングができる人材は、まだまだ少ないです。だいたいがIT業界に行ってしまいますから・・・。

自動化ツールや計算ツールを自分で作れるだけで、職場での存在感が変わります。私自身、生産管理の担当中にツールを作り始めたことで、「ITに強い人」として認識され社内SEに抜擢いただきました。

私見ですが、

優秀なプログラマーでも、その業界、会社が何をしているかはわかりません。現場が一番知っています。なので現場がITを使えるようになればまさに、鬼に金棒。これが日本の発展に大きく寄与する。と私は考えて発信しています。

「作れる」になると、仕事への向き合い方が変わる

「この作業、毎月手でやるの?」と思ったとき、以前は諦めていました。今は「作れるかもしれない」という発想ができます。この発想の転換が、仕事の満足度を大きく変えました。

プログラミングは、早く学べば学ぶほど、早く仕事で使えるようになります。「いつか学ぼう」の先送りは、それだけ長く手作業が続くことを意味しています。


まとめ

  • 製造業の手計算の問題は「計算の難しさ」ではなく「共有のしにくさ」にある
  • 個人のExcelを全員が使えるWebツールにすることで、計算ミスと属人化が解消される
  • 生成AIを使えば、計算フォームはHTMLとJavaScriptで数時間で作れる
  • GitHub PagesやNetlifyを使えば無料でWeb公開できる
  • 「作れる」というスキルは、製造業の実務で確実に武器になる

製造業の計算ツールを実際に使ってみたい方は、filmtools.jp をご覧ください。フィルムパッケージ業界向けの計算ツールを無料で公開しています。


自分でも同じようなツールを作ってみたい方へ。

プログラミングは「業務改善のための道具」として学ぶのが、最もモチベーションが続きます。「作りたいもの」が決まっている人は、学習スピードが全然違います。

製造業や総務など、非エンジニア職でプログラミングを身につけると、転職市場でも「業務改善ができる人材」として評価され、将来へ繋がります。

今の職場でなかなか評価されない、仕事の幅を広げたいと感じているなら、プログラミングのスキルは確実に選択肢を広げてくれます。

今からでも遅くはないです。「自分には向いていない」と思う前に、まず1つ作ってみてください。

製造業・事務職向けプログラミング学習の始め方