製造業でWebアプリを自作する方法|計算式の属人化を2時間で解決した実例

「また同じ計算か…」「これ最新か?」と思いながらExcelを開いたことはありませんか。

製造業の現場では、毎日同じような計算を手作業で繰り返すシーンが多いです。重量計算、歩留まり計算、単位換算、日報の集計……。しかも担当者によって使うExcelファイルがバラバラで、どれが最新版かわからない状態になっていることも珍しくありません。

「計算式を一度Webアプリにしてしまえば全員が使えるのに」と思っても、「プログラミングはできないし、IT部門に頼んでも優先度が低い」で止まっている方も多いはずです。

この記事では、製造業で生産管理を7年担当していた私が、ChatGPTを使ってWebアプリを2時間で自作し、計算ミスを月5件からゼロにした手順をまとめます。プログラミングの知識がなくても、今日から試せる内容です。計算ツール・日報フォーム・在庫確認・不良集計・FAQの5業務を例に、自分で作りたい方向けに解説します。


製造業でWebアプリが特に向く5つの業務

「Webアプリを作りたいけど、自分の仕事に使えるか判断できない」という方のために、製造業で特にWebアプリ化の効果が出やすい業務を整理しました。以下に当てはまる業務があれば、今日から取り組む価値があります。

① 計算ツール(重量・歩留まり・単位換算など)

毎回同じ計算式を手で打ち込んでいる業務が一番向いています。重量計算(面積×厚み×比重)、歩留まり計算(良品数÷投入数)、単位換算など、入力値が変わるだけで計算式は固定の業務です。Webフォームにしてしまえば、入力するだけで答えが出ます。ファイルのバージョン混在も計算ミスも、この一手で大半は消えます。毎回Excelを開いて5分かけていた重量計算が、URLを開いて数値を入れるだけの10秒に変わります。

② 日報・点検記録の入力フォーム

毎日同じ項目を紙やExcelに入力している日報・点検記録も、Webフォーム化の効果が出やすい業務です。スマートフォンやタブレットからも入力できるようになるため、現場での記録漏れが減ります。CSV出力を付ければ、データの集計作業も不要になります。紙やExcelへの手書き入力が、スマホからのフォーム入力に変わり、月末の集計作業がなくなります。

③ 在庫・部品の確認ツール

「この部品の在庫、今いくつあったっけ?」という確認に毎回共有フォルダのExcelを開いているなら、Webで参照できるようにするだけで大きく楽になります。CSVを読み込んでテーブル表示するだけでよいので、技術的な難易度は低い部類です。共有フォルダのExcelを毎回開いていた確認作業が、ブックマークURL1クリックに変わります。

④ 不良件数・生産実績の集計・可視化

週次や月次で手動集計している不良件数・生産実績のデータをWebで可視化できると、会議での資料作成が大幅に楽になります。棒グラフや折れ線グラフの表示も、ChatGPTに指示すれば自動で生成してくれます。月末に手集計していたグラフ作成が自動集計に変わり、会議前の資料作成がなくなります。

⑤ 社内FAQ・作業確認チェックシート

新人がよく聞いてくる質問や、作業前に確認する手順をWebにまとめておくと、口頭での説明回数が減ります。紙の手順書と違い、更新すれば即時全員に反映されるのもWebの強みです。新人への口頭説明が繰り返されていた状況が、URLを渡すだけで自己解決できる状態に変わります。

なお、大規模なシステム開発・外部データとのリアルタイム連携・セキュリティ要件が厳しい業務は、市販のSaaS製品や専門業者への依頼が向いています。上の5業務は「社内で小さく使う」「担当者が一人で完結できる」という条件のもとで特に効果が出やすいケースです。


製造業の現場で「手計算の地獄」に7年間いた話

「あの式、どこのファイルに入ってる?」が口癖になっていた

私はフィルムパッケージの製造現場で生産管理を7年担当していました。この業界は計算が多いのです。重量、巻き径、単位換算……担当者が変わるたびに式の意味を説明して、またミスが出て、また修正して。これを7年繰り返していました。

一番つらかったのは、Excelファイルの散在です。「重量計算.xlsx」「計算_最新版.xlsx」「計算_最新版2.xlsx」「計算_final.xlsx」。こういったファイルが共有フォルダに混在していて、どれが正しいのかわからない状態になっていました。

実際に、旧バージョンの計算式を使い続けた結果、見積もりの数値がズレていたことが3回ありました。そのうち1回はお客様への見積もりに影響が出て、修正対応が発生しました。このときの苦い経験が、Webアプリを作ろうと決めた直接のきっかけです。

問題は「計算式の難しさ」ではなく「共有のしにくさ」だった

手計算が面倒な本当の理由は、計算そのものが複雑なのではなく、「正しい式をみんなが使える状態にできていない」ことでした。

個人のExcelに閉じてしまうと、属人化が進む。
共有フォルダに置いても、バージョン管理ができない。
誰かが更新すると他の人が古い式を使い続ける。

「これはもうWebにしないとダメだ」と思ったのは、この問題を解決する手段がWebツール以外には見当たらなかったからです。


非エンジニアが2時間でWebアプリを作った手順

結論:作れます。ただし「何を作るか」の設計が9割

技術的なハードルは、ChatGPTがほぼ越えてくれます。「この入力欄に数値を入れたら、この計算式で結果を出して表示してほしい」という仕様を伝えれば、HTMLとJavaScriptのコードが出てきます。私は最初のツールを以下の手順で2時間以内に完成させました。

ステップ内容時間
Step1計算式・仕様を紙に書き出す10分
Step2仕様をChatGPTに伝える15分
Step3生成されたコードをHTMLファイルに貼る10分
Step4ブラウザで動作確認・修正30分
Step5GitHub Pagesで公開20分

プログラミングを独学で始めた頃、昔は1つのツールを作るのに1週間かかっていました。ChatGPTが出てからは、数分でコードのベースが出てくるようになりました。あとは動作確認と修正をするだけです。

最初に詰まるのは「仕様の言語化」——このテンプレートを使う

ChatGPTへの伝え方で一番悩むのは、仕様の説明方法です。「重量を計算してほしい」だけでは不十分なことがあります。以下のテンプレートをコピーして使ってください。製造業の計算ツールなら、ほぼ一発で意図したコードが出てきます。

以下の仕様で計算ツールを作ってください。
HTMLとJavaScriptで書いてください。

【ツールの目的】
(例:製品の重量を計算する)

【入力項目】
- 面積(㎡)
- 厚み(μm)
- 比重(数値)

【計算式】
重量(kg) = 面積(㎡) × 厚み(m) × 比重 × 1000

【出力】
計算結果を「重量:〇〇 kg」の形式で表示する

【備考】
- スマートフォンでも使いやすいシンプルなデザイン
- 数値以外が入力された場合はエラーを表示する

公開方法はGitHub Pagesが一番手軽

HTMLファイル1枚のツールなら、GitHub Pagesに置けば無料で公開できます。サーバーの設定も費用も不要です。URLを共有するだけで、チーム全員が同じツールを使えます。複数のツールをまとめたサイトにしたい場合は、Netlifyが便利です。ドラッグ&ドロップでデプロイできます。


実際に作ったWebツールで解決したこと

私が作った filmtools.jp は、フィルムパッケージ業界向けの計算ツールを無料公開しているサイトです。このサイトを作って、現場で起きていた3つの問題がほぼ消えました。

計算ミスが月5件から0件になった

サイト公開後、計算ミスに関する問い合わせがゼロになりました。以前は月に3〜5件、「数値がおかしい」という確認が来ていました。古いExcelを使っていたか、手入力でミスしていたかが原因のほとんどでした。Webツールにすることで、全員が同じ計算式を使うようになり、この問題が消えました。

「式どこにある?」という質問がなくなった

URLを送れば終わりです。「計算ツール、また共有して」という連絡が来ることもなくなりました。ブックマークしてもらえれば、次からは自分で開いてくれます。

属人化が解消された

私が担当を離れても、ツールはそのまま動き続けます。計算の中身が変わったときはサイトを更新するだけで、全員が最新版を使える状態になります。メンテナンスも一カ所に集中するので、管理が格段に楽です。


社内でより広く使えるようにする次のステップ

1つのツールが完成したら、次のステップとして以下を参考にしてください。まず1つだけツールを作ってみたい方は、「AIで業務ツールを作る方法」から始めるのがおすすめです。


まとめ

  • 製造業の手計算問題の本質は「計算の難しさ」ではなく「共有のしにくさ」にある
  • 計算ツール・日報フォーム・在庫確認・不良集計・FAQの5業務でWebアプリ化の効果が出やすい
  • 生成AIを使えば、計算フォームはHTMLとJavaScriptで2時間以内に作れる
  • GitHub PagesやNetlifyを使えば無料でWeb公開できる
  • 「作れる」というスキルは製造業の現場で確実に武器になる
  • フィルム業界の例で紹介しましたが、5業務の考え方と作成手順は製造業全般で同様に使えます

製造業の計算ツールを実際に試してみたい方は、filmtools.jp をご覧ください。フィルムパッケージ業界向けの計算ツールを無料公開しています。「こんな感じのツールを自分でも作れるのか」という参考にもなります。

自分でも作ってみたいと思った方は、AIで業務ツールを作る方法も参考にしてください。「今の現場で使える形」まで一気通貫で書いています。