「総務って、雑用係でしょ」
この一言を、直接言われたことがある人もいれば、誰かがそう話しているのを耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
私は総務歴10年になりますが、何度もこの言葉に向き合ってきました。言われた瞬間は「違う」と思いながら、なぜかうまく言い返せない。悔しいような、でも完全には否定しきれないような、あの複雑な気持ち。
この記事を読むと、次の3つがわかります。
- なぜ総務が「雑用係」に見られるのか(構造的な理由)
- 実際には何を守っている仕事なのか(本質の再定義)
- 今週から始められる「雑用扱い」からの向き合い方
「総務って雑用係でしょ」そう言われたとき、私はどう感じたか
入社3年目に上司に言われた一言
入社して3年目のころ、他部署の管理職の方に言われたんです。「総務って、要は何でも屋というか、雑用係ですよね」と。悪意はなかったと思います。雑談の流れで出てきた言葉で、その人は軽い気持ちで言ったはずです。
でも、そのとき私は返す言葉が出てきませんでした。「違います」と言いたかった。でも「何が違うのか」を即座に説明できなかった。その夜、なんとなくもやもやしながら帰った記憶があります。
悔しいけど、否定しきれなかった理由
振り返ってみると、その感覚には理由がありました。総務の仕事は、確かに「雑用っぽく見える業務」が多いんです。電話対応、備品の補充、来客案内、各種手続き対応……。どれも「地味で目立たない」仕事です。
しかも「できて当たり前」で、失敗すると怒られるのに、うまくいっても特に褒められない。そういう業務が積み上がると、自分でも「これって雑用だよな…」という気持ちになってくるのです。
ただ、そう感じながらも「でも違うはずだ」という感覚もあった。その「なんとなく違う」を言語化できるようになったのは、もう少し後のことです。
総務が「雑用係」に見られる3つの構造的な理由
「雑用扱いされる」には、個人の能力や態度とは関係のない、組織的・構造的な原因があります。3つに整理しました。
理由1:成果が「ないと困る」形でしか現れないから
営業なら受注数、エンジニアならリリースした機能、という形で成果が数字・物として残ります。でも総務の成果は「何も起きなかった」という形で現れることが多いのです。
備品が切れていなかった。手続きが遅延しなかった。来客時に混乱がなかった。これは立派な成果ですが、誰かが「すごい、ありがとう」と言ってくれることはほとんどありません。問題が起きたときだけ「なんで対処できてないの」と言われる。この非対称性が、仕事の価値を見えにくくしているのです。
理由2:仕事の多様性が「なんでも屋」に見えるから
こんな経験はないでしょうか。午前中は労務手続きの書類を処理し、昼に備品の発注をかけ、午後は社内行事の準備メールを送り、夕方に施設管理の業者対応をする……。
総務の仕事の範囲は広いです。労務・法務・施設管理・備品・社内行事・安全衛生・広報補助……担当する会社によってはさらに広がります。この「なんでもやる」という特性が、逆に「専門性のない雑用係」という印象を生む原因になっています。
専門職は「〇〇の専門家」と言えますが、総務はなかなかそう言いづらい。これは職種の構造上の問題であって、個人の問題ではありません。
理由3:完了しても感謝されにくい業務が多いから
実はこれ、多くの総務担当者が共通して抱えている問題です。あるアンケートでは、総務担当者の約8割が「自分の仕事を社内にアピールできていない」と回答しているという調査結果があります。アピールできないのは能力の問題ではなく、この「感謝されにくい構造」が原因であることがほとんどです。
社員が会議室をスムーズに使えているのは、会議室の予約管理や設備点検を誰かがやっているから。名刺が会社の基準通りに刷られているのは、印刷業者との調整や確認作業を誰かがやっているから。でも、それに気づいている社員は少ない。
「あって当然」の環境を維持し続ける仕事は、ありがたみが感じられにくいのです。それを「雑用」と表現される側は、長年積み上げてきたものがあるのに、なかなか評価されにくい構造に置かれているということなんですね。
実際には何を守っているのか?「雑用」と呼ばれる業務の本当の役割
備品管理・電話対応・来客対応の本質
たとえば備品管理。「ただの在庫補充」に見えますが、実態は違います。消耗品の発注タイミングを判断し、コストを管理し、各部署のニーズを先読みして適切な量を準備する。小さな会社では予算管理の一端も担います。これを「雑用」と言い切るのは、少し乱暴なのではないでしょうか。
電話対応も同じです。外部からの第一印象を担うのは総務であることが多い。クレームの初期対応、取引先への橋渡し、社員への正確な伝言。ここでのミスは会社全体の信頼に関わります。
来客対応に至っては、相手の会社の規模や担当者の立場を判断しながら、適切な対応をする必要があります。これは経験と判断力が要る仕事なのです。
会社が止まらないために必要なことを、誰かがやっている
私が総務の仕事を再定義するときに使う言葉があります。「インフラを守る仕事」です。
会社のインフラというと設備や通信環境を思い浮かべるかもしれませんが、もっと広い意味でのインフラがあります。社員が毎朝オフィスに来て、ストレスなく仕事を始められる環境。郵便物が届いて処理される流れ。社内通知が漏れなく伝わる仕組み。これらすべてが「インフラ」であり、そのインフラを誰かが維持しているから、他の部署は自分の仕事に集中できるのです。
総務の仕事が止まると、会社全体が止まる。それがわかる人には、総務は「雑用係」とは見えません。
※総務の仕事内容を詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。
→ 総務部の1日の仕事内容【総務歴10年がリアルに解説します】
「雑用扱い」から抜け出すための3つの向き合い方
構造的な理由があるとはいえ、「だから仕方ない」で終わっては何も変わりません。私が実際にやってみて効果があったと感じる向き合い方を3つ紹介します。
向き合い方1:自分の仕事を言語化する習慣を持つ
最初に取り組んだのが、「自分の仕事を言語化すること」でした。漠然とした表現を、業務の実態を反映した言葉に変えるだけで、聞こえ方がまるで変わります。
いくつか例を出すと、こんな感じです。
- 「備品管理してます」→「複数部署の消耗品発注を一元管理し、在庫切れゼロを維持しています」
- 「電話対応してます」→「社外問い合わせの一次窓口として、情報の正確な受け渡しと記録管理を担っています」
- 「来客対応してます」→「来訪者の受付・案内を通じて、会社の第一印象を管理しています」
聞こえが変わると、自分の認識も変わります。最初は「そんな大げさな」と思いましたが、言語化してみると「あ、自分ちゃんとやってるな」という感覚が生まれてきます。これは自己満足ではなく、自分の仕事の価値を正確に把握するための作業なのです。
向き合い方2:仕事の成果を可視化・報告する
「成果が見えにくい」という構造的な問題には、自分から見せる努力で対抗するのが一番得策です。
私がやっていたのは、月に一度、総務の動きをA4半枚分にまとめて上長に共有することです。フォーマットはシンプルで構いません。たとえばこんな内容です。
- 今月処理した各種申請・手続き件数:○件
- 備品関連の発注・在庫管理対応:○回(コスト削減額:約○円)
- 社内問い合わせ対応件数:○件
- 今月対応した突発案件:○○(○日間で解決)
これを3ヶ月続けたあたりから、上司との会話が変わってきました。「今月も件数多いね」「この案件どう対応したの?」という言葉が増えてきたんです。知らなければ評価できないのは当然のことで、見せ方を変えるだけで反応が変わるのを実感しました。
向き合い方3:「守る仕事」から「変える仕事」を1つ作る
既存業務をミスなくこなす「守る仕事」だけだと、なかなか「雑用係」という見られ方から抜け出しにくいのです。そこで、「自分から変えた仕事」を1つ作ることをおすすめします。
私の場合は、紙で管理していた備品台帳をExcelに移行して、発注タイミングを自動アラートできるようにしたことがあります。それほど大きなプロジェクトではないのですが、「総務さんがこういう改善をしてくれた」という形で話題になりました。
「変える仕事」は大げさなものでなくてよいです。たとえばこんなことから始められます。
- 社内への問い合わせをカテゴリ分けしてFAQ化する
- 毎回手入力していた定型メールをテンプレート化する
- 紙で管理していた申請書類を電子フォームに切り替える
「変えた実績」は可視化しやすい。守り続けてきた価値は見えにくくても、何かを変えた実績は伝わりやすいのです。まずは小さな一つから始めてみるのが一番現実的です。
評価される総務がどんなことをしているかは、こちらの記事で詳しくまとめています。
→ 評価される総務がやっている6つのこと|目標設定・報告・可視化の実践法
総務の仕事に自信を持てるようになったターニングポイント
向き合い方を変えていくなかで、一度だけ「ああ、自分の仕事は雑用じゃなかったんだな」と感じた場面があります。
ある年、会社で大きな設備トラブルが起きたことがありました。その対応で、業者との折衝・社内への状況共有・代替手段の手配・報告書の作成を、私がほぼ一人でこなしました。数日後、別部署の部長から「総務がいなかったら現場が動けなかった」と言ってもらったんです。
それまでは「雑用しかやってないな」という気持ちが心のどこかにあったのですが、その言葉で少し抜けた気がしました。普段の地味な仕事の積み上げが、いざというとき機能する。それが総務という仕事なのだと、腑に落ちた瞬間でした。
「評価されている」と実感できるタイミングが少ないのが総務の辛さですが、確かに存在します。そのことは、今でも自信の支えになっています。
※「総務は報われない」という気持ちが強いときは、こちらも読んでみてください。
→ 総務は報われない?それ、あなたのせいじゃない【3つの構造的理由と対処法】
まとめ:総務は雑用じゃない。でも「そう見せない努力」も必要
「総務=雑用係」という見られ方には、個人の問題ではなく、組織構造と仕事の性質による原因があります。
- 成果が「ないと困る」形でしか見えない
- 仕事の多様性が「なんでも屋」に見える
- 感謝されにくい業務が多い(約8割がアピールできていないという調査もある)
この構造を理解したうえで、自分からできることは3つあります。
- 仕事を具体的な言葉で言語化する
- 月次で成果を数字にまとめて報告する
- 「変えた実績」を1つ作る
「総務は雑用じゃない」というのは正しい。でも、そう見られている現実もある。であれば、「そう見せない工夫」を自分からしていくしかないのです。実際に動いてみると、少しずつ職場での見られ方は変わっていきます。
10年働いてきて言えることは、「総務の価値は自分が証明していくしかない」ということです。誰かが勝手に気づいてくれるのを待っていると、ずっと雑用係のままになってしまいます。
もし、今の職場では評価の改善が難しいと感じているなら、環境を変えることも一つの選択肢です。総務・人事の経験を活かした転職については、こちらの記事が参考になります。
→ 総務・人事経験者に使ってほしい転職エージェント5選
次に読むべき記事
今の状況に合わせて、次のステップを選んでください。
- 評価される総務がやっている6つのこと ― 具体的な行動に落とし込みたい方へ
- 総務は報われない?それ、あなたのせいじゃない ― 報われない感覚が続いているなら
- 総務からのキャリア設計 ― この先どうするか考えたいなら
- 総務・人事経験者向け転職エージェント5選 ― 転職を検討しているなら